Q/
 
紫外線量だけはいっちょ前に初夏の
寒いオホーツクの波間へ海鵜が潜って
ぴょこりと浮かぶ
嘴の一つが淡く 光った。
あれは
いつかの私の恋心だろうか……

潮風を爽やかに甘いだけだと思っている
恋に恋する乙女のような無為の憧れを信じ
心筋を操作しようとした日々は思春期の裏道に弾けた。

ナイフを象った砂糖菓子で手の甲の血管を一筋ずつ裂かれ
ベビーピンクの断絶を無造作に手渡される日常を
泳ぎきれるほど強くなく
流されるほど軽くもなかったから
綿を摘み取るように
ふっつりと
恋心に出会うことなく失恋した

あの日のまま
気水域の小石を捨てられずにいる
私はそっと釣り糸を垂れた。
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