嘘/本城希望
 
僕は彼女に嘘をついている
僕がいちばん好きなのは彼女じゃない
だけど好きな素振りをしている
もちろん嫌いではない
好きだ 大好きだ
でもいちばんではない
きっとそれは彼女がすぐに手に入ったからだと思う
僕に開いた心の穴にすんなりと入って来てくれたからだと思う
だけどこれはひとときの安らぎ
あの子を忘れるための手段
そしてあの人に手が届かないもどかしさへの誤魔化し
真実はただひとつ僕の胸の中にある

僕は彼女を愛していない

きっとこれ以上前に進まないだろう
可もなく不可もないこの恋を続けても何も変わらないだろう
無駄な時間だけが過ぎ彼女の心を傷つけていくだけ
だけどこれが僕の精一杯
今目の前にいる彼女だけが僕の味方
僕の傷を癒してくれる
それで十分じゃないか

でもやっぱり僕は嘘をついている
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