ゴシック的断片/佐々宝砂
 
お姉さま。
この館に逗留してまだ一ヶ月足らずですが、
私はもうお姉さまとの暮らしを恋しく思っております。
お父さまはたいへんお優しいのに、お兄さまは恐ろしい。
いつも地下に引きこもっていらして、
ときどき顔をお見せになると、
それはそれは沈鬱なお顔をなさって、
イザベラ、お前はなんと哀れな!と力弱くお叫びになります。
それからお父さまに向かって、
凄惨ににやりとお笑いになるのです。
愛しいお姉さま、あなたのお力と勇気をお貸し下さいまし。
あなたのイザベラは恐怖におののいております。

 若き修道女は手紙を受け取り石の寝台に坐る。
 爪を噛む癖が戻っている。

医師ベ
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