バカンスのビーチ/ああああ
 
んで眠った。

一切の生命から開放されふやけた沈殿する汚泥の恵みにお礼をひとことつぶやいて、自然とは違ってほとんど不死身の缶詰のブリキを一時間もかけて石と爪でこじ開け一切れのニシンを咀嚼して飲み込む。つまみあげておがむと太陽より鮮やか。あからさまに毒がある。例えるとまるでそう。薬品の万華鏡。きっと沖でなにか事故があったんだ。たぶん化学物質を積んだタンカーが、沈んでこぼしたインクがピンクの甘くて陳腐な夢のようにこの島を変えてしまったのだろう。

何時間もかけて砂と灰にまみれて歩いても歩いても同じ風景が、退屈な風景画のように続く砂丘でぼくはやっと終点を見つけたかもしれない。人のように見えないあまりにも大きな男の死体が横たわり額に一匹の蟻が這い回っていた。この時を待ってた。久しぶりに出会った呼吸する動物、きっとぼくももうすぐ、こいつの世話になる。エサになることへの鋭い恐怖がぼくの胸に刺さるが、ぼくは砂に転がり、理想の添い寝。こっちへおいで!
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