雨の佇みを拾って/朝焼彩茜色
 
雨でひんやりした湿気の壁から声がした
私の錯覚が返事をした
夏を越えてぼんやり名月の香りがした

季節は空色に染まり風に運ばれてくる
差し支えのない刹那を1つ盗んで流れてゆく
ただ感覚1つ踏み外しただけ
雨の音も完璧ではないからね きっと

空の上で季節が営んでいる
風に運ばれ 風に呼ばれ 幼いままに生まれる
錯覚のまま問わずに 利口だと思う

あまり考えない方がいい
壁は云った
うん 分かってるよ
湿気混じりの声で私は返事をした
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