君は蛍、夜を泳ぐ/中原 那由多
 
逢魔時に貨物列車がガタンゴトン
その向こう側
それはいつの日も
青い幻、淡い眼差し

生憎の、雨
4.7inchの水槽を
ただ、漠然と覗き込む

上へ、下へ、奥へ、奥へ

気づけば鱗が瞬いて
気付けば背びれが、尾ひれが生えて
扇形の排水溝から
海を目指して飛び出していく
それ故に、クラゲの産卵に見惚れては
瞼の裏側にいつも忘れ物をしている

君は蛍、夜を踊る


止まらない風
終わらない夜
不意打ちの

積乱雲が仁王立ち
睨みつけて
睨みつけて

稲妻を振り下ろせば
紫陽花が、にかりと笑う

君は蛍、夜に落ちる


落ちる

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