午睡/むぎのようこ
 
背のびしても
とどかなくなった月は
親指と
人指し指のあいだで
沙になって
さらさらと風にのる
くらい、脆い

雨の
こぼれたすきまから
青く
ふる光を
織るようにしてなびく
葉から葉の
ことばもとおくなって
しまったから
六月は
みみもとに
葡萄石のばらを
咲かす

やわらかな背骨を
ゆびでなぞる
夜には
みずになるばかりの
今は
たしかに在るかたちに
流しかためる

うすむらさきの
傷のようなまぶたを
ひらいては
しろい蝶みたく舞う
ひかりの群れが
しずかに
地面にしみこんで
ここは
あかるい揺りかご
微睡んだつかの間の
ゆびきりを
拾ってからきみの
背を
さく、めざめ、







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