夏の夜の願い/由比良 倖
 
私は 青い清流を 生きています
私は 何かが降ってくるのを 待っています
神の啓示でもいい 宇宙からの光でもいい
何かが 降ってくるのを 大真面目に待っています

けれど もう長い時間 私は待ちすぎたかもしれません
私の取り分は もう 終わったのかもしれません
安息を 求めすぎたかもしれません
……私は絹のようなテーブルクロスを拡げ、

小さな 小さな 小さな 箱庭を作っています
その中を流れる川が
目下 私の生きる理由です
涙ぐむような川が 細く細く流れています

帰り帰り来ては 帰る場所を失います
ここは私の 部屋ではない 誰かが
誰かが 迎えに来てくれるのを 待っています

涙ぐむような川が 細く細く流れています
優しい 笛の音がします
しかしそれは 私のための笛ではない

私のための 時代ではないのです
涙ぐむような理由も……

無くともないのです

私は 何かが降ってくるのを 大真面目に 待っているのです……
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