「淋しいと呟いてしまう」/ベンジャミン
 
  
ふと 遠くを見るような視線で
あなたは 呟いたようだった

なにをどう 言葉にしたのか
僕は 聞き取ることができなくて


  あなたは 聞こえないように
  わざと 呟いてみせたのかも


あなたと 同じ方を見たくて
僕も 遠くを見るような視線で

あなたと 同じようになにかを
呟いて みたかったんだけど


  僕はたしかに 呟いたんだ
  でも 呟いた言葉が思い出せない


きっとあなたも そんな景色を見て
それが 思い出になってゆくのを
静かに 見送っていたのかもしれない

あなたはいつも 僕の少し先を
歩いているような 気がした


  僕は できれば同じ歩幅で
  並ぶように 歩きたいのだけど


ああ そうだった
そういう あなただった

僕は今日も 遠くを見るような視線で
そんなあなたを 静かに
見送った

それさえも 思い出になってゆくのを
やっぱり 淋しいと思ってしまう

それもまた 思い出になってしまうのを
やっぱり 淋しいと呟いてしまう
 
 
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