複雑性PTSDという病、メンタルハラスメントにあってからの再発と回復/田中修子
 
のこころに無自覚な嘘をついて行ってゆく加害であることを、思い知る。アウシュビッツからの数少ない生還者であるプリーモ・レヴィが、生還後に一番苦しめられたのも、このタイプの善良なドイツ人であった。彼が収容所で骨と皮になってやせ衰えて病気にかかり、ドイツ人の医師に受診できた時、その診察室の窓から仲間のユダヤ人を破棄するための煙突が見える状態にありながら、そのドイツ人医師は、「あなたはなぜそんなに不幸な顔をしているのですか」と尋ねたという。そして、戦後、そのドイツ人医師からは、収容所でそんなことが起こっているはずがなかたったことと、自分は善意の人であるということを強調する手紙が来たという。

圧倒的な
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