頬に残る涙あとは消えないまま/ムウ
 
行き交う人の視線はあったと思えば逸らされて
人混みに飲まれていく押し戻そうとすれば
虚しさに潰されそうになる

点滅する信号機が生気を失った瞳
無造作に生活用品(がらくた)に
同化しつつある身体に色味を与えている

包む腕と忘れたい 忘れたくない
懐かしい 感触と匂い
パステルカラーに彩られた日々

朧げな輪郭と変わらぬ笑みを向けられる度に
言いそびれたあの言葉を思い出し
息を吸い込むけれど鳥の声とひび割れた写真立てに吸い込まれる


何事もなかったように
揺れるレースのカーテンは
まるであの頃のあなたようだね


戻る   Point(0)