羽の折れた兎/
由比良 倖
羽の折れた兎は
黄色い風のなかを
うす青いシャボン玉にのって
泳いでいるのです
沈黙するマグネットと
剛健な雪玉をおびやかしながら
渓谷の底には
凍り付いたケチャップの
静かな憧憬
粘ついたドラムを
叩くのにも倦んじて
草たちは死装束を召している
冬の陽光の ザワついた静寂が
兎の目の色を 清くする
兎はうっとりと 目をとじた
シャボン玉は 谷間を分かつ
水柱の影に 差しかかっている
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