燃えさしの煙草と蝉の抜殻と/由木名緒美
手の平を透かして、皮膚の内側から太陽が射す
精霊が戯れる木陰にいて
同じ歌を幾度口ずさんでも
けっして消えることのない痕跡
その痣を口移しであなたの皮膚に刻んでは
剥がれ落ちようとする人間の像をどうにか保とうと試みるのです
蝉が鳴いている
覚醒の合図を大気に震わせて
夢から醒めるには長い長い時間が必要だと
空を仰ぐには契約の鎖に巻かれなければならないと
目醒めるごとに失われても哀しくはないでしょう
土中の記憶など手放してしまばいい
その音がしんと静まりかえる瞬間
きっと彼は思い出すのだ
暗闇の孤高な瞑想の答を永遠に失ってしまったことを
赤い炎が燃えさしに変わり
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