最果てに咲く蓮/高原漣
 
誰も知らない工場で換気扇が風と遊んでいる

忘れられたワセリンガラスが朝日に炙られている

埃にまみれた大気が分厚く層をなして

なぜ此処にいるのかわからないまま

永劫に中二階(メザニーン)に閉じ込められる

突っ立ったまま号泣する道化は蒼い血をながす

滴る血液は床に落下する前に仄暗く光を放って消えてしまう

ガラスの砕けた腕時計の文字盤を舐めまわす「それ」は、

茜さす虚空をふと見やる

美しき世界!

雀は囀るのをやめてしまった

魂なき身体が汚泥の中で藻掻きつづける

歪んだ表情はあまりにも無残で美しい大輪の花

恐るべき<<大蓮華>>

それは最果てに咲く蓮

戻る   Point(1)