枇杷の実ゆれて/帆場蔵人
 
枇杷の実、たわわ、たわわ、と
ふくれた腹をかかえて転がりそうな
夕陽に照らされ景色をゆすって風を
くすぐり、たわわ、たわわ、と

悲しげな
その実に
歯を立て

しごきとる、なぜにこんなに甘いのか
山の頂、風にゆさぶられ、私はひとり
みんなひとりでゆれている

夕陽をすくって帽子をかぶり
たわわ、たわわ、と家路を急ぐ
どの道行こうと俺はひとりだ
夕陽をすくった帽子に残る

僅かなぬくみは枇杷の甘さか

山でぷっ、と吐きだしたあの種は
いつか芽をだしまた枇杷の実を結ぶ

それだけが嬉しさだ


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