母の季節は夏と冬/かんな
 

姉は兄は
家の中にいる
みんなどこを向いている
私に気づかないのはなんで
カーテンを抱く
ひどく軽い
ひどくやさしくて
腕をすり抜けない
部屋の片隅でしゃがみ込む


「わたしを見捨てる気なの?
「あんたの為にやったのに


夕陽が海に沈むときひとは
誰かを憎んだりしない
海底の貝殻は
何かを叫んだりしない
自転車に乗り
海岸線を走る
サドルが擦れ
わずかな痛みが走る
海辺は泣くためにある
涙はいくらだって海が隠す


*


息子が月の話をする
なんで昼間は白いんだろうね

いってらっしゃい。
いってきます。

夫と息子に手を振る
朝日が昇る速度で
ゆっくりと日常が私を照らす




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