母の季節は夏と冬/かんな
 

母が静かに佇み
やわらかな星々に横たわると
夜が落下する速度で
慈しみと憎しみが揺れ動く
母の季節が訪れるとき
夏と冬が行き来して
子どもたちは春と秋を奪い合う


「あんたは身の程知らずだわ。
「育て方、失敗だったわ


夜を更に黒く塗り潰す
月がひとつ綺麗で白い
希望って何
朝は明るく眩しい
事実を照らすから
早く早くと急かす


*


夫のコーヒーカップを洗う
ふちに茶色い汚れが残る
汚れが残るから
洗い落とす
息子の起きた音がする
音は日常をやさしく
私に渡してくれる


*


父はどこに
祖母は祖父は

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