言語A/佐藤伊織
 

今から3万年ほど前に
言語Aが存在していた

言語Aはその文法構造が
会話において動的変化する特殊な言語だった

文法と会話の内容が同じ地平にあり
言葉を発することはその言葉の改変を意味していた

言語Aはその特殊性から様々な内部言語を生み出した
内部言語は言語Aにおける一つの不動点なのだ

言語Aにおいて何かを伝えることは
ある一つの言語を構築することだった

言語Aにおいて会話をするということは
言語と言語の衝突を意味していた

言語はぶつかりあい混じり合い様々な非平衡過程を経て
二人の間に一つの不動点を作り出す

その瞬間において意味は伝達される
意味は言葉を通じて伝達されたのではない
言葉というトンネルの中を抜けていくのだ

現代においてそれはプロトコルとよばれる
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