幕間の燐光に/由木名緒美
 
大気の継目
深い呼吸に上昇し
仰げば次元の小径 
真鍮の足跡

蟻となり纏った視野は日輪の槍に射貫かれ
せせらぎは大木に流れを受容される
私は硬直した椅子の背となり空間に浸る
それは賛歌の一音節の滲み
捲られた楽譜の摩耗する微音

広大な草原は観念の蔓草に絢爛し
美酒は寛容な甘さで頭に降り注ぐ
名付けられた胸は不可知の重み
震わせた裸体はこの骨の主か
貴方の灼熱の声音か

在ることが奇岩となる均衡に
眩暈は虹となり比率を浸透させていく
溢れる弦は言葉を忘れ乱舞し
なんという狂暴な代弁者!
荒れ狂う熱情を掲げ持つ

それは夢の抜殻
やさしい体温の衣擦れに潜んだ
密約の饗宴
あたたかな揺り籠を這い出でて
開かれた扉の閃光の眩さ

終幕は開幕に逆巻かれ
照明に捧げる心臓に焦れる
幕間の子守唄
躍動の無音に瞼を休め
物語の再興は静かに目覚めの時を待つ

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