夢でした/印あかり
ええ 夢です
わたしなど夢です
あなたの目にも耳にも鼻にも残らない
夢です
いちばん隅の机の上で
ちぎり絵をふたりでしました
桃のようなほっぺを寄せあっていました
ぼろぼろの虹の下であなたと手を繋ぎ
原っぱの滴を蹴散らして駆け回りました
違いに不寛容すぎたわたしたちは
互いの茎をへし折ろうとして
自分の葉っぱを巻き込んでしまうのでした
涙でなんにも見えませんでした
気がつくと 綺麗な思い出はすべて
カラスが持ち去ってしまっていました
お互い別の人に恋をしました
ふたりとも秋の蛍のような恋でした
死骸は花の袋の中に仕舞いました
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)