再度の怪/阪井マチ
 
 昔馴染みの友人と町を歩いていて、歩道の隅にけものの彫像が置かれている一角に差し掛かった。
「そういえば、この辺りで幽霊を見た、という話を聞いたことがある」
 何の気もなくそんな話を始めると友人は振り返って私の顔を見た。
「その幽霊っていうのは、こんな顔だったんじゃないか?」
 どんな、と思うと彼の姿がどこにもなくなっている。つい一瞬前まで目の前にいたはずなのに、広いがらんとした歩道には私以外誰の姿もなく、町の喧噪が遠くから伝わってくるほかに人の気配は何一つしないのだ。
 周りをいくら見回しても、声を掛けても、友人は戻ってこない。ざわざわと胸に不安が湧きおこり、私は堪えられずその場から逃
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