Universal Boardwalk/カワグチタケシ
九月
僕らは歩いた ときには
手をつないで ときには
手をはなして 僕らは歩いた
夜の道を 急ぎ足で
そして見たものを 見た
順番に声にしながら 夜の
運河に浮かぶ水母 海鳥の死体
船の通った跡に にじむ月を
一歩足を進めるごとに ひとつ
足は前に進む 運河に
架かる橋を渡り
見つけるために歩く 夜
目に見えないものを
風を温度を夢を砂を噛む声を
十月
陸の上にだけ夜が来る
海の上には暮れない昼がある
出来事だけが終り 時計の針は進む
私はこの三日間を糸杉の下で過ごした
真空は記憶を無傷で保存するのに適している
火の
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