唯一の友だち/帆場蔵人
 
のは
いつだったろう?
多分、産まれたときだろう
なんで泣いていたのかは
わかるはずもない
まだ言葉を知らないから
叫んだのかもしれない
ただ言葉にならないものを
叫んだのかもしれない
もう、言葉にならない詩を
叫んだのかもしれない
産み落とされた苦しみを

***

あなたへの手紙を朝に夕に、書き殴り
そうして、なんとか、行き帰る

ポストは変わらず待っていて
腹を空かせて待っていて
銀の唇には蜘蛛の巣
それをゆっくり
ひき裂いて
手紙がなかへ、なかへと
舞い落ちて、虚ろを満たしていくと
わたしは軽やかな器になっていく
戻る   Point(10)