ドアー/ツノル
 
々。いつものように走り去る車軸の歪みが響きわたり、トントントン、ドンドンが、終いには、けたたましい音を鳴らしながらドアの取っ手をもぎ取る気配だ。身構えて外に出ていた。混毛を振り乱した野良犬が牙を剥きだして襲いかかる。咄嗟に身を躱すが、鈍く尖る歯がはらわたの中まで抉り込んできて身動きがとれない。睨みつけたまま暗闇に佇んでいた。月灯りに照らされた老木の傍らで、目の潰れた少女と太った雌の猪がとどめを刺そうと機会を窺っている。けたたましい叫びが笑い声に変わる。ひらひらと栗の葉が落ちてきて足下を覆う。腐葉土の中までも漁ろうと云うのか。発狂はそれでも治まらなかった。身から出た錆ではないのか。いや、このような化
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