副葬のためのノート/春日線香
 
きて、束の間、電気が明滅する。金魚鉢の出目金が腹を上に向けて死にかけている。茶碗、箸、ハンガーなどが床に散乱しており、足の踏み場もないとはまさにこのこと。外は花粉が飛んでいるのでもう何日も部屋にいる。何日も。



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そこには男女が千人も葬られ、時の経過につれてゆっくりと地中を動き回っているだろう。清潔な骨が擦れ合う中に、子供が差し込んだアイスの棒や自転車のスポークが混じったりする。急ぎ足で林を抜けてそこを過ぎる。ちょうど空に大きな月が掛かったところだ。




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