副葬のためのノート/春日線香
 
春の夜、ひとつの管玉がアパートの玄関に埋まっていて、きっとこの世の終わりまで気づかれることはない。それはもう定められたことで覆しようがないのだ。誰がそんなことをしたのか、小さな水仙の花が掲示板に画鋲で留めてある。



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嫌だな、と思って上を見上げる。低いベランダから垂れ下がる食虫植物の房のひとつが、熟れたような赤紫に変わって膨れている。たしか去年の夏、些細な出来心で蝉の死骸を放り込んでおいたはずだ。それを思い出した。中は見えないが。



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自転車を置きに裏に回るとあちこち工事している最中で、脳を
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