旧作アーカイブ2(二〇一六年一月)/石村
 
ない。)}



  しじま


涙が しづかに 零れていく
思ひよりも 淡い 何かのゆえに
雪よりも 軽く 心が悲しむ

ひとはゐない どこにも
空はある ―― 雪は舞つてゐる ――
そして涙が しづかに 零れていく

親しかつた季節を 私は
思ひ出さうとする しかし
それはいつも 行つてしまふ どこかへ
目覚めるとやがて 散り散りになる 夢に似てゐる

雪の夜の しじまは深く
ひとの心を 私は はかることができない
涙が しづかに 零れていく
それは お前のものなのか それとも 私の

多くの命が 今 ここを去つてゐるだろう
かすかな鈴の{ル
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