イリスィリサイト/中原 那由多
 
かがり火を消し去る
純、潤、順

水が焼ける音
の、背後からは
翼をもがれた旅人が
一人
赤の渇望へと
にじり寄る
旅人が
その
赤の渇望の
窪みへと
とく、っと流し込んだ
安い酒
赤の渇望は
ぷくり、と
膨らみを帯びる

かと、思いきや
甘ったるい瘴気を
ぷんと漂わせながら
塩辛い体液を
ぐちょりと撒き散らしながら
縮こまり
うずくまるかのようにして
タンパク質の
膜を
すぅっ、と張っている

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旅人は
赤の渇望の
その
行く末を
見届ける
、こともなく
捨て身の拳を
赤の渇望
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