お歯黒/ルラ
 
男の髑髏を擂り鉢に入れ擂り粉木で砕き擂り潰しながら傍らに置かれた壺の半ば迄腐らせた自らの血を柄杓に掬い垂らしていく
黒ずんだ液になったのをみて両の掌に掬いとり口に含むと舌で撫で付け広げていった
擂り鉢のなかの黒い液を指先に付け丹念に歯に塗り込んでいった
青年の遺体は河原に曝され傍に落ちていた首からは髑髏だけがぬかれていた
操を立ててきた老婆はある夕一度だけ会釈を交わした青年を恋慕していた
三面鏡に向かって座し長い間ぬかづいた後薄い頭を嫋やかに上げ紅をさしたぼろぼろの唇を開け微笑みかけた
黄ばんでいた歯は大凡黒塗りにされており初夜にしてやもめになった老婆は口のなかの夫に尋ねた
おなまえは
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