台所/
為平 澪
埃をかぶった食器棚がうかびあがる
夜に積もる底冷えした何かがこみあげて
沸騰した水は泡を作ってあふれかえる
仕舞われたお茶碗と
湯気の上がることを忘れてしまった湯呑たち
その間で かろうじて
寝息を立てている老いた母と動かない猫
おいやられていくものと
おいこしていくものの狭間で
消えていった人のことなどを
あいまいに思い出せば
台所には 昔あった皿の分だけ
話題がのぼる
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