ポンペイにて/春日線香
 
待合室でテレビを見ている。様々に体を病んだ人々。肩。頭の中の狂い。テレビではスポーツ選手の病のニュースがとめどなく流れている。ペットボトルを傾けて濁ったカフェラテを飲む。喉の奥に甘い液体が流れていく。二千十九年午後三時。



         * * *



相手が何を言っているのかわからなくなる。口の動きが空中に溶けて、おもちゃみたいな青い梯子に巻き付いたかと思うと、痩せた足だけの存在になって上り下りする。不思議なこともあるな、と思っていると、徐々に世界の温度が下がり始める。



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象の肉をスプーンですくって食べる夢を見る。
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