高速バス/為平 澪
 
ぜか

終着駅につくまでに晴れたり曇ったり小雨が降ったりして
窓ガラスを叩く滴は長い尾を引きずったまま先は見せない

進めば進む程 何かに手繰り寄せられてしまうバス
得体のしれない悔恨のような 赦しのような
取り返しのつかない優しさのようなものに
揺すぶりをかけられたまま 私はバスの中を彷徨った

色づいたものが消えてしまった薄暗いロータリーで見えたのは
幼い私を背負う母と手をつなぐ作業服の父

若い父と母はバスの中の私に気づくと
「あっち」と 笑って指を差し
すれ違いながら三人で歩いていく

降車ボタンを押し忘れた私は 
終着駅を過ぎたターミナルで一人捨てられ
車掌から手渡された乗り継ぎ引換券に記載されていたのは
【ここからは自分の足で】



戻る   Point(6)