淀みに浮かぶ、あれやそれ/
 
例えば今、息を吐く。
そして、二度と吸うことが無くてもいい――

結論からいえば
その日は私の声音に含まれる死神の衣擦れが
転覆病の金魚の側線を掠めただけだった
パクパクする半透明な唇を読むまでもなく聞こえた
「いなくしほでん死」という呪詛の言葉

   【沈黙】

不自然なカットインに時間がねじ曲がりそうになり
エアレーションは低く抗っている
私は吐き気を堪えて湿気った窒素を水槽へ吹き込み
沈黙を不自然にフェードアウトさせた

   * * *

その髪は烏色
ではない
暗い暗い暗い茶色
赤みが
両親の血のような粘っこい赤が
光に浮き
闇には溶けき
[次のページ]
戻る   Point(2)