節分/為平 澪
 
節分の夜に細々と二階の窓を濡らす音がして
外に人影が見えた

こんな遅い夕食時に帰ってくるのは
パチンコで負けて家に入り辛いお父さん

家内と呼ばれる鬼は
温かい部屋で猫と一緒にゴロゴロしている

パチンコに勝った現金を差し出さなければ
自分の建てた家の敷居も跨げない父が
窓の外で彷徨っている

ずぶ濡れの父が大切そうに抱えているのは
福豆ではなく ナイロン袋に入ったコンビニ弁当

そして私に
「ええか。絶対お父ちゃんが負けた事、お母ちゃんにゆうたらアカンど。
 お母ちゃん、ワシがおそうなったから、腹へらかして、機嫌も悪いか
もしれへん。お前な、この弁当渡して
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