故郷/中原 那由多
 
目覚めの一杯、その珈琲は
欠伸より先に注がれて
眩惑が晴れたのちに
細胞膜へと浸透してゆく
窓際の古い毛布を染める東雲を背に
明けの明星は針であるかのように
在りし日の純白に突き刺さる

(手を叩く)
目を見開いた

石灰のラインは静かに千切れてゆく
その光景を焦らず眺めていられることが

お前へのせめてもの償いとなるのだろうか

淡い三日月、青天の霹靂
涙が乾く前に畦道の行進
サウンドホールにこだまして
故、児、呼と喉が鳴る

台山を巡り、大河の流れに逆らえば
学び舎は正義の人道
その尊さを仰ぎ
夕焼け小焼けのやまびこと
橋を渡り、坂を下ろう

[次のページ]
戻る   Point(2)