故郷/中原 那由多
目覚めの一杯、その珈琲は
欠伸より先に注がれて
眩惑が晴れたのちに
細胞膜へと浸透してゆく
窓際の古い毛布を染める東雲を背に
明けの明星は針であるかのように
在りし日の純白に突き刺さる
(手を叩く)
目を見開いた
石灰のラインは静かに千切れてゆく
その光景を焦らず眺めていられることが
お前へのせめてもの償いとなるのだろうか
淡い三日月、青天の霹靂
涙が乾く前に畦道の行進
サウンドホールにこだまして
故、児、呼と喉が鳴る
台山を巡り、大河の流れに逆らえば
学び舎は正義の人道
その尊さを仰ぎ
夕焼け小焼けのやまびこと
橋を渡り、坂を下ろう
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