「骨の魚」/桐ヶ谷忍
 
昨夜の夕飯に頭と骨だけ残して食べた魚が
ゆうゆうと空を泳いでいる
綺麗に身だけ食べられた魚のみが
泳げる資格を与えられるので
私たちは神経質に箸を使う

骨の魚にはもはや天敵もいないから
いつ見ても楽しげな余生を送ってるようだが
七日程で空の上の天に召される

私も、そしてきっと多くの人々も
死んだらあのようになりたいと思うが
人間の身体は複雑すぎて
いまだに火葬場止まりで
第二の人生への扉は開かれない
死んだ人は直接天に向かうのか
謎は解明されないままだが
私たち大人は幼子を叱るとき
あのおさかなさんみたいになれないよ、と
効果てきめんな脅し文句を言う

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