地殻の節理/由木名緒美
 
ひとひらの葉に穴を透かして
虫は陽をあおぐ
表皮を緑に染めるため、
いいえ
葉を愛するゆえに、彼はひとひらを枯らすのです

あなたは私を幼いと言う
一足一足がまるで驚愕だと言う
あなたはどこまで大きくて、
あなたはどこまで猜疑を知らないのでしょう

私がまあるくいられるのは、濁流が木漏れ陽に凪いでしまったから
大地は深沈を忘れ、白昼夢の午睡に小石を転がし踊っている
ふたつの花が向かい合い接吻を風にゆだねる

黄昏の視野は永遠のようで飛沫の重みよりも奔放に
この世界の蓋を開ければ流星が雪崩となって地を滅ぼす
その最期の瞬間を同じ虹彩に縁どるのならば
私は火砕流となってあなたのもとへ向かおう
届かない空を慕っているのです
燃え盛る赤土を噴き上げながら到底とどかない成層へと
夕暮れを染め上げて叫ぶ

宙づりの思慕を悲恋と呼ぶのならば
届かない宇宙は故郷そのもの
地殻はあなたを慕っているのです
あなたを慕っているのです




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