猫野事務所/やまうちあつし
 
次の面接は
猫の事務所

氷河期だから
買い手市場だ

面接官は三匹

目つきの鋭い黒猫と
まだら模様の虎猫
そしてスラリとスタイルのいい
ペルシャ猫

お土産のつもりで持参した
鰹節をまずは見咎められた

そういうのは困る
こういうご時勢
何事も公明正大に運ばなくては
世間体というものもある
と黒猫は重々しく話すが
三匹の視線は
絶えず鰹節に注がれている

猫の事務所の業務と言えば
猫の目から見た人間の歴史を
忠実に書き留めておくこと
二足歩行の目線とは異なり
気ままに四足でうろつく目線からしか
見えないものがあるという

犬では近す
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