小詩/メープルコート
昇る朝陽に恵まれて、小鳥の歌声もこの林道には涼しい。
路傍の人との挨拶も愉しく、足元の落ち葉ですら愛おしい。
別荘地に吹く風は清らかで、空気は澄んでいる。
どこかの家からモーツァルトが聴こえる。
古びた教会で私は毎朝の日課をこなす。
・・・家族全員健康でありますように。
顔を上げると、真っ赤なランドセルを背負った小さな女の子が隣に立っている。
・・・お母さんの病気が早く治りますように。
太陽はすでに高く、生の輝きに満ちていた。
歓喜は誇らしげに次の作品の勝利を確信した。
私は小さなアトリエで画布に向かい、今朝見た光景を想い起こしていた。
眩い光の中に女の子の横顔と赤い印象を描いた。
翌日、教会で静かな葬儀があった。
そこには昨日見た小さな女の子がいた。
アトリエに戻った私は、私の画布一面を黒く塗り潰した。
その時、降り注ぐ太陽が一瞬間モーツァルトの顔に見えた。
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