This is a pen/やまうちあつし
 
ペンを持たされた人がいた
親からか神からか
それはわからなかった
そのペンは
インクが尽きることがない
どこにでも落ちているような
ありふれたボールペンなのに
いくら使っても
書けなくなることがなかった
   
物心ついたころから
日記をつけ始めた
その日の天気
その日の元気
その日あったこと
その日なかったこと
明日やろうと思っていること
昨日できずに終わったこと
少年の文字から青年の文字へ
どんなに頁を重ねても
インクがかすれることはなかった
   
日記を書くことに飽きると
絵を描くようになった
初めは自画像や
誰かの似顔絵だったが
そのう
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