時間/中原 那由多
 
?真昼の月の下を揺蕩う時?
水平線に愛は溺れていく
電子回路による観測情報は
役に立たない事後報告

追いかけているのか、追われているのか

いずれにせよ
その柔肌に触れた、あの感触を
思い出せないままでいる

忘れた頃にそっと浮上する
息継ぎのタイミングは、ずれてばかり
掬い上げた指の隙間
さらり、落ちて、残らない
繰り返しては繰り返して
刻一刻と満ちてゆく

「幸せ」の影に隠した長い針
指先で滑らかな感触を確かめながら
中心(こころ)を貫き、繋ごうか
改札口を抜けたかのように
真夏の少年のように
ただ真っ直ぐに夢を刻む

朝焼けが眩しいのは
深い夜があったから
たじろいで、ぐっと瞼を閉じたなら
白いペンキで塗り潰された窓ガラスが割れ
二つの線はようやく重なった

讃美歌は今、鳴り止まない
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