また会える?と彼女は聞いた/ホロウ・シカエルボク
 

殴り続けた傷口は紫色に膿んで
吐き捨てた唾には汚れた血が混じっていた
敵など居なかった
敵など居なかった、どこにも
おれはただひとりで挑んでいただけだった


アルコールランプのように頼りない街灯のあかり
ウルリッチの小説みたいなショーウィンドウの前で
ジャガイモみたいに腫れた自分の顔を見ていた
まるで相手の居ないキスを続けているみたいに


叫びはあのころのようにカン高くはなかったが
ゾクゾクするような意地があった
おれはまだやっていけるだろう
戦いとは成果の数で語るものではない
まだそれを続ける気があるかどうかという意志があるかないかだ
あるかないかだ
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