上京/石佳
 
あの頃一番都会だった町は
歳とともに段々都会ではなくなって
そのうちいわゆる田舎を離れて
私はいわゆる上京をした

誰もが認める都会で
時折誰かが、寂しくはないかと尋ねる
寂しいとはどういう感情なのだろう?
どこにあっても私は私なのに……

イントネーションの違いが
如実によそものだとわからせる
どうしてここへ来たの?
そしてお決まりのその言葉

幼い頃に憧れた魔女のように
自分の住みたい街を探して来たのだと
そんなことを言えばどうなるのだろう?
都会に住んでみたくてと答えながら考える

人も街も空気もお気に入りのチェーン店も
ほとんど変わらずここにあって
毎日は変わらないように過ぎていく
画一化された町並みに郷愁など起こらない

煩わしいニュースはシャットアウトして
都会の気楽さに染まりましょう
誰にも関心の薄い世界のほうが
きっとどこより暮らしやすい
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