耳鳴りの羽音 version ?/帆場蔵人
こつン…… パ タ たタ ……
硝子戸がたたかれ
暗い部屋で生き返る
耳鳴りがあふれだして
からの一輪挿しは
からのままだ
幼い頃 祖父が置いていた 養蜂箱に
耳を あてたことが ある 蜂たちの
羽音は 忘れたけれど なにかを探していた
耳鳴りは 蜂たちの羽音と 重なり
ひややかな 硝子戸に 耳をあてて
蜂 になるんだ
やみに耳をあて 描く やみのさき
花は咲き 花びらは風にすくわれる
花びらが風を打つ音に さそわれ
蜂は さ迷いまわる ばかり
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