耳鳴りの羽音 version ?/帆場蔵人
 
こつン…… パ タ たタ ……

硝子戸がたたかれ
暗い部屋で生き返る
耳鳴りがあふれだして

からの一輪挿しは
からのままだ

幼い頃 祖父が置いていた 養蜂箱に
耳を あてたことが ある 蜂たちの
羽音は 忘れたけれど なにかを探していた
耳鳴りは 蜂たちの羽音と 重なり
ひややかな 硝子戸に 耳をあてて

蜂 になるんだ

やみに耳をあて 描く やみのさき
花は咲き 花びらは風にすくわれる
花びらが風を打つ音に さそわれ
蜂は さ迷いまわる ばかり
[次のページ]
戻る   Point(2)