潮/高原漣
 
血液混じりの夕立が

夕凪の前にやってくる

生臭い風が通り抜け

生暖かい体温と

生暖かい気温が

溶け合って少しずつ散逸し

透明なビニール傘越しに

赤き血潮は色褪せて

私はただ孤独で

赤い夕立の只中で立ちすくむ

見上げる曇天に

何の意味も汲み取れず

潮目を読むのに疲れきり

失調した渦潮に

海馬を洗われる

ソシテ

生命は遅滞する

砕かれたわれらは地に染み込み

もう目は霞んで何も見えない

ただ雨音が

聞こえている
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