傲慢の火/新染因循
 


波一つない空を見あげると、
押し固められた銀の輝きがあった。

覆されてしまった銀の輝きである!
わたしの知った海の輝きである!

わたしは
揺れていた、いな、
落下していた、いな、
飛びたっていた、いな、
燃えあがっていた!

いかなる魔術の業ゆえか
わたしの眼下ではわたしを
赦すことのない波紋の群れが
つめたき銀色を幾重にも深めて
わたしを、しずかに、睥睨している。

わたしはもう、叫ぶべき口も
伸ばすべき腕もなくして、
わたしという叫びとなって、

存在しようと、
その身がまるく捩れてなお
わたし、は 存在しようと、
存在しようと、

燃えさかる。
空のすべてを焦がそうとしてなお、
焦がせなかったものすべてを
焦がそうと、
赫赫と燃えさかり、

ただ、
燃える。


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