縁側/為平 澪
一日中縁側で過ごす人は
陽の目を見るのが少なくなった人だ
何を話すでもなく 寄る猫を追い払うでもなく
牛乳屋を見送って 小学生の登下校に目をやりながら
物干し竿がハンガーごと錆びていくのを
固まったまま じっと見つめている人だ
庭に落ちた葉を
数えるでもなく教えるでもなく
減ることにも増やすことにも関心なく
塩辛いお茶の味を
いつまでも喉に含ませている人だ
日当たりのよい縁側は
手押し車の茶色いミシンを出し 脱穀機をまわし
庭にはうろつき回る鶏を放ち 雑魚獲りで捕獲した魚を泳がす
土手の上をヒルに咬まれた男の足が通り過ぎ
手拭いを頬被りした女が 柄杓の
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