ちいさなちいさなことばたち 二/田中修子
「黄色い傘」
きいろい傘が咲いていて
わたしのうえに 屋根になっている
かさついた
この指は
皿を洗い刺繍をし文字を打ち
自由になりたくて
書いていたはずの文字に
とらわれている
おろかさよ
羽根だった指が
雨の日に白く
燃えあがる、よう
きいろい屋根だけが
あたたかく笑っていた
---
「ねがい」
詩をいかめしいところに
座らせないでください
擦り切れてゆく手縫いの雑巾、フラミンゴ色の夕暮れ雲、磨き上げたシンク、縫いかけの針のすわるピンクッションのように
思いだせることはないけれど、想うことだけはできる
あの花色の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)