ちいさなちいさなことばたち 二/田中修子
 
「黄色い傘」

きいろい傘が咲いていて
わたしのうえに 屋根になっている

かさついた
この指は
皿を洗い刺繍をし文字を打ち

自由になりたくて
書いていたはずの文字に
とらわれている
おろかさよ

羽根だった指が
雨の日に白く
燃えあがる、よう

きいろい屋根だけが
あたたかく笑っていた

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「ねがい」

詩をいかめしいところに
座らせないでください

擦り切れてゆく手縫いの雑巾、フラミンゴ色の夕暮れ雲、磨き上げたシンク、縫いかけの針のすわるピンクッションのように

思いだせることはないけれど、想うことだけはできる
あの花色の
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