ロストの先端/ホロウ・シカエルボク
 


色褪せたクリーム色の壁、不自然なほどにしんとした空気―わたしはたまにこの景色を病室のようだと感じることがある、でもここは病室ではなくて―まあ、そのことはあとで話すことにする…道に面した壁はすべてガラス張りになっていて、左端にかつて入口だった片開きのドアがある。そのドアはもう二度と開かれることはない。そしてそのガラスのすべては防災シートで内側と外側の両方から隠されている。どうしてそういうふうにしたのかいまとなってはわかるすべもない。その隙間から入り込んでくる月の光は鮮やかなレモン色で、どうやら今日は穏やかな夜のようだ。眠りについたときは真夜中だったのに、いまは夜が始まったばかりのような感じだ
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