伝えられてきた言葉/帆場蔵人
 
雨よ、静かに頂きを越えて
落花した花の傷口を
楚々と洗い流してくれ
時との旅だけがそれを
癒すのだとしても、雨よ
落花した花弁を歓びあふれる
場所まで流してくれないか

丹後富士の頂へ
うろこ雲が巻き上げられていくと
明日は雨が来る、スマートフォンから
顔を挙げて空を見上げてそう呟けば
伝えられてきた
言葉はまるで祈りのように
だれかの耳朶をうつ








戻る   Point(5)